「インナーマッスルが大事」とはよく聞くけれど 2
前回に引き続きインナーマッスルのお話をします。
腹部のインナーマッスルの中にひとつ異端の役割を持つ筋肉があります。
それが「腸腰筋」です。大腰筋と腸骨筋の二つの筋肉から成ります。
大腰筋は胸椎の最下部から腰椎までで起こり、股関節の小転子という部分に付着します。
腸骨筋は骨盤の両翼の腸骨の内臓側から起こり、大腰筋と合わさって股関節の小転子より下部に付着します。
黒人とアジア人で3倍もの筋肉量の差があったと一時期話題になった筋肉ですね。
筋肉の走行的に股関節の屈曲(膝を持ち上げる)役割を担いますが、
それと同時にその反作用として骨盤と背骨を前下方に引き下げるように働きます。(これが重要)
次に挙げるのが「腹横筋」です。
この筋も非常に重要な筋肉で、コルセット筋等とも呼ばれています。
腹部の深部側面に位置し骨盤から肋骨の下部を繋ぐように付着していて、腹部の前方では白線という結合組織に付着します。
この腹横筋の主な役割は、前回書いた「腹圧を高める」という作用です。
この筋が収縮を起こすことにより腹部の内圧が高まり、体幹の安定性が高まるのです。
単に体幹の静止した状態を維持するだけでなく上肢や下肢の動作に先行した収縮を起こし、
外側に存在する外腹斜筋や内腹斜筋の動きを助けて、動きの中での安定性を高める働きをしていることも研究により観察されています。
さて、仕事などで座位姿勢の時間が長い方で、この腸腰筋や腹横筋の筋力が低下していると何が起こるか。
それは「骨盤の後傾」です。
身に覚えがある方が多いかと思いますが、座っている時に骨盤が後ろに倒れてお腹がクチャっと潰れるような姿勢になる方は、腸腰筋や腹横筋が弱くなっている証拠です。
意識してまっすぐ座ろうとしても気付くと後ろに倒れ込んでしまうのは、骨盤を引き起こすのに必要な筋力が足りていないからなのです。
この座り方が何を引き起こすか、短時間であれば問題は無いのですが、長時間に及ぶとまず第一に腰痛を引き起こします。
腸腰筋や腹横筋が支えきれない体幹を特に多裂筋という背骨の後ろ側の深層にある小さい筋肉が、
その役割を引き受けてしまうことによりオーバーワークとなり筋肉の硬化が起こります。
筋肉の硬化は筋組織の虚血状態を生み出し、これが一定のレベルを超えると痛みを感じる受容器が感作を起こして
徐々に鈍い痛みを脳が認識するようになります。
さらに筋の硬化が進んだ状態で外部からの強い負荷(急に重いものを持ち上げる等)が掛かった際には筋挫傷が原因の急性腰痛を引き起こす、なんてことも起こりえます。
そこまでの状態にならなくとも慢性的に続く鈍い痛みというのは生活の質を著しく低下させますよね。
ではこれらを回避するためのインナーマッスルのトレーニングはどのようなものがあるのか、次回に続きます。